上腹部MRI+MRCP
戻る現在、当クリニックでは上腹部MRI検査として、横断像を4シーケンス<T1(in、 out Phase)T2 HeavyT2 DWI>、冠状断を1シーケンス<HeavyT2>を撮影ルーチンとしております。スライス厚は5mmを基本として35枚程度の撮影です。息止めシーケンスでは10~20秒で検査を行う息止めスキャンと、当クリニックが採用しているシーメンスメディカル製のMRIの大きな特徴である、横隔膜の呼吸移動をリアルタイムで追従しながら撮影出来るシーケンス(PACE法といいます)を併用して検査を行っております。
MRCPでは2D息止め撮影と、3D呼吸同期PACE法を使用してボリュームデータを収集してそれを適切な角度にMIP処理したシーケンスの二種類をルーチンとして撮影しております。
(GRAPPAというパラレルイメージング技術により検査時間は一昔前の半分になっております)
上腹部MRI検査のコントラストの特徴
T1強調画像
血腫や脂肪性分の検出に適しております。一度の撮影でinPhase、out of Phase両コントラストを撮影できます。out of Phaseでは水と脂肪成分の位相の向きが反転するため、混在している組織からの信号が低くなり(強調されること)、腫瘍の潤有無や微細な脂肪性分も確認することができます(脂肪肝や副腎の腺腫など)。
T2強調画像
解剖学的な形態情報が得られ読影の主軸をなす画像です。
胆管膵管を高信号で描出します。HeavyT2強調画像:T2強調 画像に近いコントラストですが、水成分をT2強調画像より高信号に描出します。肝内の嚢胞と肝血管腫の鑑別に有用です。
DWI(拡散強調画像)
胆嚢癌や胆管癌を高信号に描出し腫瘍病巣に関する感度は高いですが、炎症なども高信号に描出するため良悪性の鑑別場度には適さないので他のシーケンスやモダリティーを踏まえて総合的に診断することが重要です。
MRCP(Magnetic Resonance CholangioPancreatography)
胆道膵管の胆汁や膵液などの水成分の信号のみを描出します。左右の肝管・総肝管・総胆管・胆嚢・胆嚢管・主膵管を高信号で描出します。結石や腫瘍などは欠損像として描出します。
2D撮影では息止めによる短時間での撮影が可能で、スライス厚を55mmに設定し膵臓全体を1スライスに含めた画像が撮影できるため、膵管の連続性が高い画像が撮影できます。また1スライスを2秒程度で撮影する為、腸管の動き等に強くなっています。
3D撮影では、スライス厚0.9mm(スライス間隔0mm)と薄いスライスで撮影しています。高コントラスト、高分解能のボリュームデータからのMIP投影処理画像では360度任意角度からしっかりとした膵管、胆管等の観察が出来ます。もちろん元画像を見ることにより微小構造を診ることもできます。
3D撮影では、呼吸同期を使用するため息止めが難しい患者様でも良好な画像が撮影できますが、呼吸間隔が不安定な患者様の場合ブラーリングのため管構造が太く見え画像上では過大評価された画像になることがあるので注意が必要です。よって2D、3D、そしてMRI画像にて補間しながら診断していただく事になります。
MRCP 3D画像
MRCP 3D画像
画像改善ポイント(主に前処置について)
・絶飲食について
患者様には、4時間前の絶食と2時間前から水分摂取制限をお願いしています。水分摂取制限の理由は、通常の上腹部の撮影より消化管内の水分が画像に大きく影響するためです。
・ブスコパンについて
消化管蠕動を抑制するためにブスコパンを投与しています。(当クリニックで問診を行い投与可能か確認しております。)
・フェリセルツについて
消化管の内溶液が高信号で描出されるシーケンスが多いため、消化管内溶液の信号を抑制するため当クリニックでは経口消化管造影剤のフェリセルツを投与しています。(当クリニックで問診を行い投与可能か確認しております。禁忌:金属アレルギーやヘモクロマトーシスなど鉄過敏症の方、消化管出血状態にある方)
フェリセルツを使用するとVater乳頭が見えなくなるという話も以前はなされていましたが、現在は高濃度(3倍濃度)で調整し、撮影条件の調整によりMRCPでは陰性造影剤の働きをして消化管内溶液の信号を抑制、T2強調画像では陽性造影剤の働きをして十二指腸を陽性造影剤で充満させる効果がありVater乳頭の情報は増えると考えられています。 陰性造影剤といえばそうなのですが、当クリニックでは通常の検査に使用する薬剤との位置づけですので、MRCPを主な目的にした検査に関しては「単純MRI撮影+MRCP」としてオーダーしていただければ結構です(クレアチニン値や造影剤アレルギーの有無の確認は必要ございません)。
※鉄過敏症の方にはフェリセルツを使用せず検査を行いますが、3D撮影等で腸管との重なりを出来るだけ避けた角度で膵管等の観察は可能です。
以前ですと、膵管の検査としてERCPで侵襲的に行っていた検査が、MRCPの登場により簡便に負担が少なく行えるようになり、当クリニックでもMRCPの検査依頼は年々増えてきております。(2013年5月現在、2~3件/日の検査を実施しております。)